【第2分科会 個人発表1】要旨

 

「女性代議士における専門性――女性初衆議院議員としての「女医」竹内茂代を事例に」

目黒茜

 

 戦後日本において女性参政権が認められる、1946年には39名の「婦人代議士」が誕生した。39名のうち3名が「女医」であり、先行研究でも指摘されているように「女医」が少なかった時代でありながら3名もの当選があったことは着目すべき重要な特徴だと考えられる。本報告では「女医」竹内茂代の女性代議士としての活動から、「女医」が代議士となっていった社会的な背景と、女性代議士における専門性について検討する。

 


「米国の郵便規制をめぐる産児調節活動家の攻防――メアリ・ウェア・デネットを中心に」

横山美和

 

 米国では1870年代~1930年代、コムストック法により避妊具や避妊情報の郵送が禁じられていた。産児調節運動家マーガレット・サンガーのライバルとされるメアリ・ウェア・デネットは、自身の著作が同法により郵送不可となったことを受け、郵政省の役人と度重なるやりとりを行った。雑誌発行や米国議会へのロビー活動などの表立った活動だけではない、こうした郵政省の役人との議論などから、多面的な産児調節運動の実態を明らかにする。

 


「2010-20年代のフランスにおけるジェンダー・バックラッシュ言説

――性的マイノリティバッシングにおける男女平等の語彙の用法に着目して」

村上彩佳

 

 本研究は、過去約10年間のフランスにおけるジェンダー・バックラッシュに注目し、特に性的マイノリティに対するフォビア言説を質的に分析する。バックラッシュ派は、既存の性秩序を維持するために、「普遍」、「自然」、「反ジェンダー」といった典型的な語彙に加えて、「男女平等」を用いた。男女平等に対する社会的合意が強まるなか、バックラッシュ派は男女平等をフォビアに用い、性別二元論と異性愛主義を強化している。