【第3分科会 個人発表2】要旨

 

「白い素肌と色つきリップ――女子高生の化粧実践の考察」

合場敬子

 

 本発表は、女子高生の美容実践の考察を通じて、日本における外見主義を批判的に検討する。外見主義とは、人々を身体的外見によって区別し、他者からの承認を得られる特定の身体的外見を維持する、差別的な現象である。女子高生32名へのインタビューと参与観察を実施した結果、一部の女子高生は、素肌が白いことが望ましいという美白意識によって化粧を始め、外見主義で高い価値を付与されている「美」を承認していた。

 


「労働・美容・フェミニズムに関する価値観の考察――美容産業従事者の語りから」

永山理穂

 

 本発表では、美容産業に従事する女性たちへのインタビュー調査から明らかになった、彼女たちの労働・美容・フェミニズムに関する感覚・価値観を紹介する。インタビュー調査で得られた語りをポストフェミニズム論を用いて分析し、これまでのポストフェミニズム論で明らかにされたことと照らし合わせながら考察を加えることを目的とする。そのさい、総合職女性と一般職女性、専門職女性の語りの比較を通して分析を整理する。

 


「地方都市における女性の祭祀権行使に関する概念整理

――九州地方の2都市における墓守代行サービスの展開からの考察」

佐々木隆夫

 

 明治時代以降の墓所管理は、星野(2014)が指摘するように「父系の墓であり、かつ長男一家が墓を管理する」ことが一般的であった。人口の大都市集中で、地方都市に墓所がある長男一家も大都市に居住し得るため、夫の死後に妻が墓所を管理している。これは、現代の地方都市における女性の役割(祭祀権の行使)であり、年忌法要、墓守、墓じまいに繋がる。本発表では、九州地方の2都市の事例から、女性の当該役割について考察を行う。