【第7分科会 個人発表3】要旨

 

「性犯罪事件報道の変化と課題――新聞記事の分析から」

牧野雅子

 

 性犯罪報道については、これまで、加害を矮小化する表記や被害者視点の欠如等、多くの問題が指摘されてきた。2017年の刑法改正や更なる改正に向けた運動、2019年3月に相次いだ性犯罪無罪判決に対する抗議から生まれたフラワーデモに見られるように、近年、社会の性暴力認識が変わりつつある。こうした状況の中、性犯罪報道も変わったのだろうか。新聞の性犯罪事件記事の分析から、性犯罪事件報道の量的・質的変化、課題について考察する。


 若者の痴漢神話受容とその背景要因について

上總藍

 

 痴漢は特に女性にとって身近な性犯罪であるが、今の社会では被害が軽視されたり、被害者が予防や被害時の言動の責任を問われたりすることも多い。その一要因として痴漢神話の存在が指摘されてきたが、その実態は十分に考察されてこなかった。本研究では、アンケート調査とインタビュー調査をもとに、若者が痴漢神話をどの程度内面化し、またその受容にどのような経験や価値観が影響を与えているのかについて明らかにする。

 


ジェンダー/セクシュアリティ教育の隘路

鬼頭孝佳・西田喜一

 

 本報告では、教育行政・教職員組合・民間教育研究団体などがモデルケースとして推奨するジェンダー/セクシュアリティ教育実践の在り方について、①専門家による啓蒙が”建前としての正答”を固定化させるという点で、独善的な教育となりうること、②新たなジェンダーバイアスを再生産する可能性があること、③”人権”といった一見普遍的で受容度の高いテーマが教育統制にも繋がり得ること、という3つの視座から批評する。